遠野で過ごした三日間 Vol.8


終章
 

 ずうずうしくもモーニングコーヒーを楽しみに奥田家に向かう車中でK君との会話。
「最近遠野は釣り雑誌に載らないね」と私。
「Fly 102につい最近芦澤さんの特集が載りましたよ」
最近全く釣り雑誌を買っていないことを忘れていた。「Fly 102」という名も始めて聞いた。
ショップに出かけてもマテリアルやフック、リーダー等の目的の消耗品を買い直ぐ戻ってくるし。
地元の書店が小説を置かなくなってから、書店に出かけることも少なくなっていた。
以前もCDCを知らずに恥をかいたことがあった。
奥田さん宅に寄りコーヒーをご馳走になっていると、なんと奥田さんが差し出した本が偶然「Fly 102」そのものだった。
つい今しがたK君との車中での会話の内容を奥田さんは知らない。
波長が合うって、きっとこんなことなのだろうな。

 奥田さんと来年の再会を約束し、新幹線で遠野にきたK君が夕方まで楽しむため予約したレンタカーを引き取りに遠野駅に向かう。9月15日、今日は「遠野祭り」の最終日で混雑している。
有名な獅子おどりと南部囃子、お神楽、田植え踊り、神輿に山車。参加者の多さに驚いた。
そうなんだ、祭りは何時の間にか「参加する祭り」から「見せる祭り」に変わってしまっていたのだ。
遠野の参加する祭り。祭りの原型がここにあった。
K君と「奥田さんも先月怪我をしていなかったら、きっと獅子踊りをしていたんだろうね」と話す。

 レンタカーに乗り換えたK君と一緒にコンビニを探しながら小友川に向かう。
コンビニは鱒沢駅の傍で見つかった。
釣りをせずに小友川の渓相をを見て帰る予定だったが、朝食後に過ごしたプールでの心地よい時間を大事にしたくて小友川を見ずにここで分かれることを告げた。


 

 フライフィッシングには様々な楽しみ方があります。私が近年テーマにしているのは「ライズフォームを崩さない釣り」です。ライズには水しぶきをあげるような激しいライズや静かに吸い込むライズ等、様々なライズのスタイルがあります。私のフライへも繰り返していたライズフォームのまま捕食してほしいのです。
ディンプルライズを繰り返していたなら、私のフライもディンプルで捕食してほしい。
そんな私のフライの楽しみ方に「心地よいキャスト」が加わったBig Two-Hearted River7'00"-#3の里帰りの旅になりました。
 気持ちが良いではなく「心地よい」には、身をゆだねるという意味があるように思われます。
ロッド性能の限界付近を使うのではなく、作り手が意図したロッドの一番良い部分を使う。
フォルスキャストを繰り返しているとグリップを通じロッドと会話が出来ます。
うまく会話が出来ればロッドが出したがっている距離も作りたがっているループもロッドが教えてくれます。
私はただ方向を決めるだけ。たったこれだけで心地よいキャストが生まれました。
水神様が教えてくれたのかもしれません。


 遠野にイワナを釣りに出かけ遠野に釣られてしまった私。
三本のライツロイヤルを持って遠野に出かけ、イワナを釣った私のライツロイヤルと私を釣った遠野在住のフライフィッシャー奥田さんのライツロイヤルの、二本のライツロイヤルがお土産になりました。

拙い私の文章を最後まで読んでくださってありがとうございます。
勢いで書きましたので、誤字脱字の多さと不自然な言い回しはご勘弁ください。
文中、ウェッブサイトを公開している方はハンドルネームで表記させていただきました。
画像を提供してくださった菊地さん、奥田さん、K君ありがとうございました。

雨の里山にて 2003/9/20
morio

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