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遠野に向かう |
遠野の日程が決まっても相変わらずの忙しさで何の準備も出来ないまま日々が過ぎていく。 以前のように出かける前に用意周到に下調べをしている私だったら時間が無いことに焦っていただろう。今は全く下調べをやらなくなっている。下調べをしていないので大切なものを見逃したり、あの場所に寄ればよかった等の後悔をすることも多いが、余分な知識が無いほうが尋ねた場所から得る感動は新鮮な気がしている。 私の知っている遠野は、「南部曲がり屋」、未読の「遠野物語」それに「河童」くらいしかない。釣り人なのに恥ずかしいことだが、川の名は「猿ヶ石川」しか知らない。 なんとか出発前夜に30分ほどバイスに向かう時間が出来た。何のフライを巻こうと考える間もなく、バイスに向かった瞬間に何故かライツロイヤルを咥えた遠野のイワナが目に浮かんだ。ためらいなく赤のフロスを使った#14のライツロイヤルを三本巻き、久しく使っていない釣り上がり用のフライボックスに入れた。他の装備は何時ものものを用意しただけで遠野釣行の釣具の準備は終わった。もちろん持って出かけるロッドは、盛岡で生まれた二本のケーンロッドだ。 少しだけ悩んだのは、何の本を持って行くかということ。結局マーク・トウェインの『トムソーヤの冒険』と『ハックル・ベリー・フィン』の二冊をもって行くことにした。多分一冊も読み終えることなく旅が終わるのは分かっているのだが、私にはこの二冊がセットであると感じており、どちらか一冊を選ぶことが出来なかった。 9月12日無事青森の仕事を終え、盛岡の菊地さん宅に向かう。 午後2時半に盛岡に到着、6月以来の再会の挨拶もそこそこに「近くの川を楽しみましょう」とお誘いを受け二人で小渓流を楽しんだ。気温が下がったときの現象、川から霧が立ち込めている。岸には木賊(砥草・トクサ)が多く生えていた。ブナとミズナラで作られたトンネルを6'03"-#3の短いロッドで釣りあがって行くが、久しぶりの山岳渓流で遡行もままならず私の足取りは軽快さとは程遠い。 元気のいい怖いもの知らずの小型のイワナが私のフライに飛びついてくる。移動したのは200Mにも満たないだろうが、一時間ほど釣り上がりもうすっかり満足した。 |