遠野で過ごした三日間
 Vol.1
三本のライツロイヤルを持って出かけ、二本のライツロイヤルをお土産に戻った。

 

Vol.2 遠野に向かう
Vol.3 遠野に立つ
Vol.4 ライツロイヤルを結ぶ
Vol.5 水神様裏での白昼夢
Vol.6 猿ヶ石川のテラスにて
VOL.7 トリップ
Vol.8 終章

 

 15日午前11時、これから小友川(長野川)に向かうK君と鱒沢駅前で別れ車をR107を花巻方面向けて走り出した。最後に小友川を見て帰る予定だったが、あえて川を見ないで帰ることにした。
遠野が後方に遠ざかっていく。自宅までは約500Kの道程だが、ラジオのスイッチは切れたままCDも聞かずに移動する。不思議と退屈もしなければ眠気もおこらない。今回の旅で出会った人達を思い出したり、印象に残った風景を思い出していたら6時間の移動が長く感じられなかった。
 自宅前の最後のカーブを曲がると、丁度ハナ(犬)が散歩を終えたところだった。私の車に気がついたハナがリードを離してもらい一目散に駆け寄ってくる。太ったハナの体が揺れている。ワンワンと吠え、顔をクシャクシャにし、体全体を使い喜びを表している。私の遠野の旅は終わった。


遠野との出会い

 20数年前、岩手海岸部での釣りの帰り道に数時間遠野の猿ヶ石川で釣りをしたことがあるが殆ど景色を覚えていない。釣る行為だけに夢中になり何も見えなくなっていた時代だった。
遠野が気になり始めたのは数年前のBSでの放送だった。遠野近郊に住んでいるフライフィッシャーがアメリカを旅する番組だった。登場したフライフィッシャーの紹介に写っていた風景に何故か懐かしさを感じていた。
 その後遠野と私の接点はそのままだったが、盛岡のロッドビルダーを訪ねたときに再び遠野が現れた。
2001年2月、雪で覆われた盛岡のBig Two-Hearted Riverと冠された工房を訪ね、数本の竿を試し振りしたが今回私がイメージしているアクションとは少し違っていた。最後に個人的に使うつもりで作ったというロッドを振らせてもらったら、そのロッドが私のイメージしていたロッドにかなり近かった。
このロッドは、遠野の川で流芯横の巻き返しにフライをフワリと落とすことをイメージに作ったとのこと。
私の注文するロッド(7'00"-#3)は、このロッドをベースに長さを3インチ短く、アクションをもう少し柔らかく作っていただくことに決まった。
その後Big Two-Hearted Riverのロッドも一本(6'03"-#3)増えて二本となり、ビルダー菊地さんとも湯川で2年連続過ごす機会もあり、その都度遠野に誘われていた。
遠野が近づき始めてきた。

わらべの上流 8月、釣り仲間Sugiさんの遠野行きが決まった。
遠野在住の奥田さんがフライを始めるきっかけを作ったのはなんと、Sugiさんのお知合いだった。偶然が重なり遠野熱が再発したSugiさんと幾人かの仲間達が遠野に出かけていった。
お盆休みでもあり、一緒に出かけたかったのだが生憎仕事で休みもままならない状態だった。
一挙近づいた遠野が又遠くなってしまったと悔しがっていたら、青森出張の話がもちあがった。8月も末に近くなり青森の客先からサービスの依頼があり、この出張を週末に組合せることで遠野の旅を実現することにした。公私混同もはなはだしいが、これを逃すと今年の遠野行きは諦めなくてはならない。客先と打ち合わせたら、9月11〜12日の日程でOKがでた。
前回Sugiさん達と同行する予定だったK君も、8月末の忍野オフ会で遠野に行きたいと話していた。
やっと遠野行きが現実になった。
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