遠野で過ごした三日間 Vol.5


水神様裏での白昼夢
 
水神様
水神様の上には誰かが乗せた5円玉が
 

 今日二つ目のポイントに向けて移動する。
入渓点はすぐに見つかったが駐車スペースが無い。一旦馬入れに車を停めるがK君も私も、この場所に駐車して釣りを楽しむ気にはなれない。入渓点近くに公民館があり三台ほどの駐車スペースもあったが、後ろめたさを感じての釣りを二人ともしたくなかった。

 場所を移動することにした。私の我侭から、この時期には釣れる可能性の無い場所だが水神様の裏で竿を出したいことをK君に伝える。水神様裏は有名なポイントらしい。
「まったくミーハーなんだから」とK君が笑っている。
K君も私の入る場所の上流部を探ってみると言ってくれた。


 プールの流れ出し直ぐ下に、大きな石が点在している。
先ずは自分のトレースするルートにフライを流し、反応が無ければそのまま進んでゆく。ルート確保の為に数投流したところで、突然背後から私の名を呼ぶ声が聞こえ振り返ると、正装(釣り支度)の奥田さんが居た。
挨拶を交わし、この場所を楽しむ間待っていただくことをお願いし又川に戻る。
セオリー通り肩の部分を探り、反応が無いことを確認しプールに入ってゆく。
沈み石、浮石、丹念に流すが予想通り魚の反応は全く無い。しかし開けたプールで振るスローアクションの竿の感触はとても気持ちの良いものだった。時々強い風が吹いてくるが全く気にならない。

水神様1
水神様2
水神様3
Photo by Okuda

 
 プールも終わりに近づき合流部まできた。先ずは流心右の弛みにパラシュートキャストでフライを落とす。
イメージしていたとおりに私のフライは静かに弛みに落ちた。しかし水面は何の変化も起こらない。
ニ投、三投とキャストを繰り返すが水面は割れなかった。
今度は左側の弛みにみに又キャストを繰り返す。
この竿が誕生する前にイメージされたキャストを、私は今遠野らしい場所で行っている。
突然私の目に、いるはずもない魚がフライを咥えるのが見えた。私にしか見えない魚がフライを咥えたのだ。
私流に描いていたこの竿に似合うであろうキャストを10数投し、誰にも見ることの出来ない私だけの魚を三匹ヒットした。

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