遠野で過ごした三日間 Vol.6


猿ヶ石川のテラスにて
 
新しき友との出会い
新しき友との出会い
 

 水神様で奥田さんと合流し、昼近くに猿ヶ石川に向かう。
奥田さんは取って置きのポイントを案内したがっているようだが、K君と話合い、わらべ裏のプールに入ることにした。
ここは民宿の直ぐ裏でもありエントリーの足場がしっかりしている。それだけに多くの釣り人が連日竿を出している場所でシビアな釣りになることは否めない。気乗りしない奥田さんを無理強いし三人で川辺に立つ。さっそく流れ出し近くで起こった小さなライズをK君が見つける。ライズ上流のレーンに見事なリーチキャストでフライを入れるが反応はない。K君の鮮やかなリーチキャストに奥田さんと二人見とれてしまう。
 




プール上流部 フライに反応が無くK君は私たちのいる場所の上下流を探りに移動していった。渋いライズを横目に、奥田さんと二人川辺のグラスソファーに座り釣り談義を始める。
フライを始めたきっかけ、共通の知人の話、湯川の話等など話題は尽きることがない。
奥田さんのタックルを拝見したら、私のリールと同じシリーズの物がセットされていた。釣り人とは単純なもので同じタックルを愛用しているだけで互いの距離は急に狭まる。
 
 楽しい一時が目の前のプールの流れのように、ゆっくり、ゆっくり流れていく。
湯川のテラスが猿ヶ石川に移動した。



 奥田さんが対岸柳の下に定位している良型のイワナを見つける。まるで湯川のブルックのように難しい場所に定位している。かなり手強そうだ。あたりまえだが先ずフライを魚に確認させなければ魚は反応しない。どう見ても魚にフライを見せられるレーンは、幅5cm、上下に15cmにも満たない狭いエリアだ。おまけにその狭いエリアの上流部と奥には厄介な柳の枝が邪魔をしている
奥田さんが釣り人の顔に変わる。
何投か目にパーフェクトにキャストとドリフトが決まった、イワナがゆらゆらとフライを見に来たが水面は割れなかった。やはりかなりスレているようだ。
「ライズしているのはここだけですよ」、近場を探っていたK君が戻ってきた。
数匹をキャッチしたようだがまだ不満げな彼。今度は私の車を使いすこし遠くまで出かけていった。

奥田さん
Photo by K

 
  奥田さんの狙っていた場所の少し下流で新しいライズが始まった。これも中々の良型イワナだ。
水面を流がれているものを捕食しているが対象物は見えない。小さなカディスが時折飛んでいたのでカディスのフライボックスを探したら、生憎K君が乗っていった車に置いたままだった。小型のメイフライ用ボックスからスローウォーターダン-#20を選ぶ、テールをカットしウィングを少し修正し小型カディスに変身させてつかうことにした。
  ここまで
Photo by Okuda

 ライズしている沈み石の両側を流すが反応は無い。
菊地さ
んのアドバイス「浮石でも沈み石でも石の上流側がポイントです。」を思い出し、沈み石上流のレーンにフライを流す。岩魚がゆっくり水面に近づいてくる。
そして今までのライズフォームと同じように私のフライを静かに吸い込んだ。7'00"-#3がやっと良型に出会え満月にしなる。少し慎重になりすぎ寄せるのに時間がかかってしまった。普段あまり使わないネットを出し、ネットを水に馴染ませる。イワナが寄ってくる。ネットまであと50cm。デカイ。
イワナと目が合ったとき最後のファイトがやってきて、突然テンションがなくなった。バレた。
 昨晩、菊地さん宅で見たビデオの1シーンを思い出す。
「アッ!、切れた・・・。かなしい〜」、その後はなんともいえない芦澤さんの笑顔。
私もあのような笑顔でこの短いドラマを締めくくれたのだろうか?


 ドラマの後は又川辺で奥田さんと話を楽しみながらポイントを休ませる。
奥田さんが又タフな場所のタフなイワナと遊び始めた。私も先ほどの場所に別のイワナが定位し水面下で捕食しているのを見つけた。運良くフライパッチの中に#20のスパークルピューパを見つけ狙い通りにフッキングさせたが、またもや寄せる途中で痛恨のバラシを繰り返してしまった。
車で移動していたK君が戻った。奥田さんから昨日オリジナル藁フライを頂だいしたのだが、普段お使いになっているボックスから記念のフライを頂いた。私が選んだのは緑色のフロスとブラックハックルで巻かれたライツロイヤルだ。


 楽しい午後も終わりが近づいてきたころ、ライズする場所も少し多くなってきた。
奥田さんが捕まえたコカゲのダンをヒントにイマージャーフライに交換しキャストしたが、ナチュラルCDCを使ったイマージャーは夕暮れの為に見えない。目印として米粒大の粘土マーカーをフライから30cm程離れたところに付けることにした。今日二度バラした場所で又始まったライズに向けキャストする。
一発で出たが、出方が今までとは違う。ヤマメだ!
二度有ることは三度・・・、今までにない慎重さでランディングした。ホッ。
 このシステムに興味を持たれた奥田さんに同じシステムをセットしてあげた。
なんと奥田さんがこのシステムを使い一発でイワナをキャッチした。
奥田さんは夏の怪我以来、今日が初めての釣り。復帰最初のヒットが私のフライ。
奥田さんが嬉しそうにしている。K君も喜んでいる。もしかしたら私が一番嬉しかったかも・・・


 三人の歓喜の声の中、猿ヶ石川のテラスは夕闇に包まれた。
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