遠野で過ごした三日間 Vol.3


遠野に立つ
 
小烏川支流
Photo by Kikuchi
 9月13日、新幹線で来る友人K君を菊地さんの車で盛岡駅で迎え三人でいよいよ遠野に向かう。

 菊地さんの案内で先ず最初のポイントに入る。渓相をみたら木立に囲まれた場所だった。ロッドは昨日と同じ短目の6'03"を使うことにした。パイロットフライとしてアダムスの#14を結ぶ。
さっそく菊地さんがライズを見つけK君が幸先よく27〜8cmのイワナをキャッチし期待感は高まる。木立のトンネルは湿度も高く少し遡上しただけで全身汗びっしょりになる。しばらく釣りあがるがその後全く魚の反応はない。
 私も湯川でガイドをすることがあるが、ゲストに1匹を釣ってもらうまでは胃が痛くなる時を過ごす。菊地さんが私たちに何とか釣らせようとしているのが痛いように伝わってくる。
しばらく釣りあがりこのポイントの終わりの堰堤に近づいたら、堰堤下に三人の先行者が見えた。入渓場所付近に車が停まっていないので安心していたが先行者がいたのだ。
ポイント移動の途中で、奥田さん宅に寄りご挨拶をする。同じ趣味を持ち共通の知人が居ることもあり初対面という気がしない。コーヒーをご馳走になり奥田さんのオリジナル「藁(ワラ)フライ」を頂いた。

 菊地さんは都合で今日だけのガイドだ。私達の翌日以降の為に幾つかのポイントを案内してくださった。
今日の最後に上流部のとある場所で釣りをするために向かったら、丁度二人のフライフィッシャーが釣り終えたところだった。時間も夕方近くでもあり、この場所で今日最後の釣りを楽しむことにした。
早朝に入ったポイントに比べ多少広々とした場所もあり、フライを楽しむにはとてもよいポイントが連続していた。三人で1時間ほど釣りあがるが魚の反応は全くなかった。連休の人出、数日前までの雨での増水、台風の影響での気圧の急激な変化、悪条件が重なればどんな川でもこのような事は起こる「これも釣り」。

 この夜は菊地さん宅にK君と二人泊めて頂ただいた。夕食後菊地さんの工房で楽しいロッド談義が始まる。
心地よい菊地ロッドの秘密がほんの少しだけ分かった気がする。
就眠前に菊地さんとK君は、K君が持参した1/25000の地図で明日からの戦略を相談している。
私は今日1日過ごした川に何かしっくりこなく二人の会話が何も耳に入らない。
魚が釣れなかったのが理由ではない。三人で過ごした時間は楽しい時間だったし、案内していただいた場所はどれもがこの時期のすばらしいポイントばかりだった。

 でも私が描いていた遠野とは何かが違っていた。
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